医療関係者向け情報
01 | 研究概要
参考文献
J Gastroenterol (2016) 51:327–336.
02 | 診断基準
診断基準
難治性疾患克服研究事業の研究班(「腸管希少難病群の疫学、病態、診断、治療の相同性と相違性から見た包括的研究」班 ( 日比班))では以下の診断基準が提唱されている。
1. 主要所見
- 胃腸管の多発性非腫瘍性ポリポーシスがみられる。とくに胃・大腸のポリポーシスがみられ、非遺伝性である。
- 慢性下痢を主徴とする消化器症状がみられる。
- 特徴的皮膚症状( 脱毛、爪甲萎縮、皮膚色素沈着)(Triad)がみられる。
2. 参考所見
- 蛋白漏出をともなう低蛋白血症(低アルブミン血症)が見られる。
- 味覚障害あるいは体重減少・栄養障害がみられる。
- 内視鏡的特徴:消化管の無茎性びまん性のポリポーシスを特徴とする
胃では粘膜浮腫をともなう境界不鮮明なイクラのような隆起
大腸ではイチゴ状の境界鮮明なポリープ様隆起
- 組織学的特徴:hamartomatous polyps (juvenile-like polyps)。粘膜固有層を主座に、腺の囊状拡張、粘膜の浮腫と炎症細胞浸潤をともなう炎症像。介在粘膜にも炎症/ 浮腫を認める。
- 主要所見のうちA は診断に必須である。
- 主要所見のA, B, C すべてが揃えば確定診断とする。
- 主要所見のA を含む主要所見が2つあり、a あるいはc+d があれば確定診断とする。
- 主要所見のA を有し、上記以外の組み合わせで主要所見や参考所見のうちいくつかの項目が見られた場合は疑診とする。
重症度分類
診断時に血清アルブミン2.4g/dl 未満の重度の蛋白―エネルギー栄養不良例では、内視鏡的なポリープの改善に時間を要する難治例が多く、薬物副作用や合併症への注意しつつ栄養管理をおこなう、細心のフォローアップが必要である。
03 | 疾病に関する研究情報
全国の日本消化器病学会指導施設に対し、過去10年間に経験したCronkhite-Canada 症候群に関しての実態調査を行った。983 施設にアンケートし、回答を得た140施設210例の症例について、臨床症状・内視鏡所見・治療状況と効果などを解析した。
(J Gastroenterol (2016) 51:327–336.)
Endoscopic and clinical evaluation of treatment and prognosis of Cronkhite–Canada syndrome: a Japanese nationwide survey
Chikako Watanabe1・Shunsuke Komoto1・Kengo Tomita1・Ryota Hokari1・Masanori Tanaka2・Ichiro Hirata3・Toshifumi Hibi4・Jonathan D. Kaunitz5・Soichiro Miura1
04 | 遺伝子に関する解析の依頼
基本的には高齢者の疾患であり、かつ家族内発症の例もない。このことから、単一遺伝子の異常によって引き起こされる疾患ではなく、この疾患そのものが子供に遺伝することはないと考えられる。しかし、高率に癌を合併することから、発症しやすい体質や癌化につながる遺伝的素因がある可能性も否定はできないと考える。